アメリカに憧れる薬剤師は多いですよね。なぜならば、米国の薬剤師は日本よりも年収が833万円も高く、高い地位が与えられているからです。では、なぜアメリカと日本では、ここまで大きな違いがあるのでしょうか?
- 「米国で薬剤師になれば、年収2〜3倍増えるって聞いた...」
- 「日本と米国で薬剤師の地位は、なぜこれだけ違うの…」
- 「米国の薬剤師になって、年収1千万円以上を稼ぎたい…」
日本と米国の薬剤師の最大の違いは、調剤業務が分離されている事です。
米国では付加価値が低い調剤業務は、薬剤師の業務から完全に切り離されています。その証拠に、米国では調剤を専門に行う「調剤技師」という職種があります。米国薬剤師の年収が1375万円なのに対し、調剤技師の年収は351万円だけです。
日本では調剤も全て薬剤師が行うため、年収が542万円に低く抑えられています。
また、米国薬剤師は日本と違い処方する権利を持ちます。そのため、独自に患者のために処方を作る事ができるし、医師が出した処方に対しても厳しくチェックします。日本では医師が権限を必要以上に持ち過ぎるため、他の職種が専門を発揮しにくいです。
ここでは、日本とアメリカの薬剤師の違いを紹介します。また、近い将来に日本の医療も米国化(ビジネス化)していく理由も紹介します。米国化する医療業界で私たちが収入を増やすには、付加価値を高め専門領域に特化する必要がありますね。
- 日本とアメリカ薬剤師の大きな3つの違いとは?
- 近い将来、日本の薬剤師も米国化する理由は?
- 米国化した後も、日本の薬剤師が生き延びるには?
記事の内容を簡単に知りたい
米国薬剤師と比較して、なぜ日本の給料は低いの…
米国薬剤師と比較して、なぜ日本の給料は低いのでしょうか?
Aさん)米国で薬剤師になれば年収が2〜3倍増える…
アメリカの医療に詳しい方にききます。日本の保険診療の医師はたいして年収がいかない。どうしても年収が高いことを希望するんだったら、アメリカで医療すれば、2倍ー10倍年収があがる、というのは、本当の話でしょうか?
アメリカの薬剤師は年収1100万で弁護士や会計士、SEを上回り米国年収ベスト10に入っていますが、 薬剤師になるのもアメリカでトップベスト10に入るくらい難しいものなのでしょうか?
参考:Yahoo知恵袋
日本と比較して、アメリカの医療従事者の給料は総じて高いですね。日本医師の平均年収が1160万円なのに対し、米国医師は2300〜2500万円貰えます。日本薬剤師が542万円なのに対し、米国では1375万円も貰えます。
アメリカの方が競争倍率が高いため、純粋に日本で薬剤師を目指すよりハードルが高いです。日本では薬剤師を増やすために、偏差値が低い私立大学でも薬学部を開設しています。
Bさん)日本と米国で薬剤師の地位がなぜ違うのか…
日米における薬剤師の地位の違いについて。
アメリカでは薬剤師は医師と同等の職権を有し、内科疾患の診断にも関与していきます。しかし日本では薬剤師は「調剤」こそできますが、基本的に医師の指示に従って調剤をしなければならない。診断などもってのほか。聴診器も持ってはいけない。なぜ2国間でこんなにも違うのでしょうか???
参考:Yahoo知恵袋
アメリカでは医療の分業化が進み、医師の権限が薬剤師や看護師にも適切に与えられています。対して、日本では医師だけに権限が集中していますね。また、医療報酬や薬剤報酬などの点数制度で規制されている事も、薬剤師の専門化の妨げになっています。
ただし、医療費が42兆円を超えた事で、日本でも医療の米国化が進みます。その過程で、日本の薬剤師も専門化が進みますね。
Cさん)米国の薬剤師になって1千万円を稼ぎたい…
アメリカで薬剤師になるには?薬剤師についての質問です。今は国立大学薬学部に所属しています。ちなみに有名国立ではありません。(旧帝大でもないです)。将来は研究職につくことが昔からの目標だったのですが、自分の大学からは難しいことが判明し、途方にくれています。
調べてみると薬剤師はこれから先給料も下がる一方だと言われ、あがる見込みはなさそうです。現在で500万~600万と聞きました。詳しいことはここではいえないのですが、将来お金が必要なので、その年収では少し厳しいものがあります。薬学部に行くことばかり考えていて、就職は研究に、とそれしか頭がなく、今事実を知って愕然とするばかりです。現在は奨学金で学費・生活費を賄っているほどで、院を合わせ9年間も大学に行くのは非常に厳しそうです。そしてそれで研究職につけるわけではないし、つけたところで、好きな研究をするというのも難しい現状です。リストラの多い業種でもありますし。
そこで、アメリカに行って薬剤師になるのがいいのではと最近考え始めました。日本と違い薬剤師の地位は高く、給料も1千万をこえるとか。。幸い英会話に関してはなんとかなりますし、これから勉強してアメリカの薬剤師資格にチャレンジする覚悟もあります。そこで質問なのですが、日本人でアメリカで薬剤師になった方はどのくらいいるのでしょうか?
やはりとても難関なのでしょうか。アメリカで薬剤師になることのメリットデメリットなどもよければ教えていただきたいです。体験談や聞いた話、なんでも構いません。どうやって資格をとるのか、大学を卒業する前にしておくべきこと、なんでも結構です。情報があまりに足りないので、どうかお願いします。また、日本にいて薬剤師免許を使いもっといい金額が稼げる就職先(院は修士までで)がもしあればご教授願いたいです。
もし、これを不謹慎な質問と感じられた方がいましたら心からお詫びいたします。切実なもので、本当に申し訳ありません。どうかよろしくお願いします。
参考:Yahoo知恵袋
米国移住者や移民を抜かして、日本の大学からアメリカの国家資格に挑戦して、薬剤師になる人はほぼいません。なぜならば、それだけのメリットが現実的にないからです。薬剤師の専門知識が必要な上に、ネイティブレベルの英会話ができ専門用語を全て把握する必要があります。
この労力を掛けて、アメリカで年収1千万円を目指すメリットはゼロです。薬剤師の資格保有者で1千万円以上を目指すならば、製薬会社や開業薬剤師を目指す方が早いです。大手製薬会社ならば、平均年収だけで1千万円を超えています。また、MR職以外にも開発研究職もあります。
年収目的だけで、米国を目指すのは非現実的ですよね。
では、日本とアメリカの薬剤師の違いとは、具体的には何があるのでしょうか?
日本とアメリカの薬剤師の「3つの違い」とは?
日本とアメリカの薬剤師には、3つの大きな違いがあります。
違い1:米国薬剤師の平均年収は「1375万円」?
職種 | 日本 | アメリカ |
---|---|---|
医師 | 1160.1万 | 2300〜2500万 |
看護師 | 478.8万 | 700万前後 |
薬剤師 | 542.5万 | 1375.7万 |
調剤技師 | なし | 351.8万 |
薬剤師に限らず、米国は日本と比較して医療従事者の給料が高いです。
米国医師の平均年収は2300〜2500万円と、日本医師の2倍以上の給料を得ています。薬剤師でも、日本が542万円しか稼げないのに対し、米国では1440万円もありますね。
米国の医療従事者の給料が高い理由は、ビジネスとして成立しているからです。
日本医療は点数制なのに対し、アメリカでは病院が自由に医療費を決められます。米国における1人当たりの医療費は9403ドル(約106万円)です。対して日本では、社会保障費から支払われ国民負担は2〜3割だけですね。
税金負担が増え続け現状では、医療費は42兆6千億円まで膨れ上がっています。また、日本の病院の多くは赤字経営ですね。社会保障制度が成り立たない現実を見ると、いずれ日本もアメリカと同じ医療制度に変わります。
すでに日本でも、保険治療外で治療する専門病院も増えていますね。その過程で、日本医師や薬剤師の給料も増える事が予想できます。
違い2:米国薬剤師は「調剤業務」をやらない
- 米国薬剤師は、調剤業務を専門に行う「調剤技師」がいる
- 「調剤技師」は付加価値が低く、年収は351万円しかない
- 日本薬剤師は、対人業務と調剤業務どちらも行っている
- 調剤技師の仕事は、人工知能の普及で92%の確率で消える
米国薬剤師との最大の違いは、調剤業務が分類されているかです。
米国では、調剤業務は「調剤技師」という専門職があります。対して日本では、薬剤師が製薬指導などの対人業務も、付加価値が低い調剤業務も同時に行います。しかし、米国では価値を生まない調剤は、薬剤師の業務からは明確に完全に切り離されていますね。
米国の調剤技師の年収が、351万円しかない事を見れば明らかですね。
欧米国では、近い将来に「調剤技師」は、人工知能の普及で消えると結論付けています。2014年にオックスフォード大学のマイケル准教授によると、「AIの普及が進み10年後には今ある職種の半分が消える」と言い、その中に調剤技師も含まれます。
- 人工知能で「調剤技師」が消える確率:92%
- 人工知能で「調剤技師助手」が消える確率:72%
- 人工知能で「薬剤師」が消える確率:1%
調剤技師が92%の確率で消えるのは、付加価値が低いと認識されているからですね。対して、対人業務に特化した薬剤師は、99%の確率で生き残ります。
違い3:米国薬剤師は「処方する権利」がある?
- 米国薬剤師は、医師の代わりに処方箋を作る事もある
- 薬の処方内容と、医師の指示が適正であるかを確認する
- 患者に対して服薬指導を行い、副作用の可能性を説明する。
- 食生活やエクササイズなど、健康上を把握して患者に助言する
- 保険会社と協力して、患者に必要な薬を提案し提供する
- 調剤技師と研修中の薬剤師の監督をする
- 他の医療従事者に対して、患者への適正な薬物療法を教育する
日本薬剤師との1番の違いは、米国では処方権がある事です。
米国薬剤師は処方権を持っているため、医師の代わりに処方箋を作る事ができます。そのため、医師が出した処方箋に対しても、厳しく監査する権限もあります。冷静に考えればこれは当たり前ですよね。薬剤師は医薬品の専門家なのだから、本来決定権を持つのは薬剤師です。
日本の薬剤師は処方権を持たないため、医師が処方した通りに調剤して渡します。付加価値が低い調剤業務の割合が増えるため、給料も増えないですよね。
ただし、今後は日本でもアメリカと同じような仕組みになります。
近い将来、日本薬剤師も「米国化」する理由は?
2018年度に医療機関に支払われた概算医療費は、前年度より3000億円増えて42兆6000億円となり、2年連続で過去最高を更新した(参考:2018年度の医療費42兆6000億円に)。
- 医療費が膨らみ、社会保障制度を維持できない
- 人工知能の普及で、近い将来に調剤業務が淘汰される
- 「かかりつけ薬局・薬剤師」で、対人業務が強化される
- 専門病院など、保険適用外の質が高い治療が増えている
- 薬剤師も専門分野なしには、これから生き残れない
近い将来に、日本の医療も米国化(ビジネス化)が進みます。
米国化が進む最大の原因は、医療費が膨らみ現状の社会保障制度を維持できないからです。社会保障制度が破綻しなかったとしても、国民負担は3割から5割、5割から7割へ増えます。その過程で、保険適用外の治療も増え専門病院も増えますね。
これまで日本が社会保障制度を維持できたのは、世界で最も裕福な国だったからですね。日本の財政が枯渇すれば、現状の制度を維持するの物理的に不可能です。
また、人工知能の普及で、日本でも薬剤師と調剤業務は分離されます。厚生労働省が推進するように、「かかりつけ薬局」の制度ができれば、完全に対人業務にシフトしますね。その過程で、日本の薬剤師も米国同様に専門家職が強くなります。
逆に言うと、専門職が強い薬剤師以外は生き残れません。現在でも二局化が進み薬剤師の給与格差は拡大しているが、今後はさらに加速します。
では、薬剤師業界が米国化した後も、私たちが生き残るにはどうすれば良いでしょうか?
米国化した後も、薬剤師が生き延びる方法は?
日本医療のビジネス化が進む過程で、私たち薬剤師はどうすれば良いのでしょうか?
方法1:特定の専門領域に特化した薬剤師を目指す
- がん薬物療法認定薬剤師など、専門領域に特化する
- 漢方薬・生薬認定薬剤師など、専門領域に特化する
- 製薬の知識を活かして、日系や外資系でMRを目指す
- 製薬会社で、学術やDI業務(医薬品管理)など研究職を目指す
私たち薬剤師の仕事は、本来ならば専門職である必要があります。
しかしながら、調剤薬局やドラッグストアの現場をみると、単調でルーチンワークするだけの薬剤師が多いですね。これからの薬剤業界を生き延びるならば、最低でも1つ以上の専門領域を作る必要があります。
例えば、「がん薬物療法認定薬剤師」など特定分野に特化すべきですね。
特定領域の専門家になると、癌を専門にする病院から高待遇でチーム医療に携われます。専門病院では、最先端の技術が揃い医療チームが欧米化していますね。さらには、癌の医薬品を研究開発する製薬会社や医薬品メーカーからも声が掛かります。
処方通りに調剤するだけでは、今後も需要が下がるのは避けられません。
方法2:調剤だけでなく管理できる薬剤師を目指す
- 現場をマネジメントできる人材は、民間企業で需要が高い
- 調剤薬局でも管理薬剤師になると、年収600〜700万円になる
- ドラッグストアで、店舗責任者になると年収は700万円以上
- 管理薬剤師になると、製薬会社からも需要が高い
薬剤師に必要な基礎知識を習得したら、現場をマネジメントできる管理薬剤師を目指しましょう。管理薬剤師という肩書を貰えれば、現場責任者として責任ある仕事ができます。
調剤薬局やドラッグストアで管理薬剤師になると、その店舗の最高額の給与を得られますね。
都内の薬局であれば年収は600万円、地方の年収が高い地域なら700〜900万円、ドラッグストアでも年収700万円以上を得られます。また、調剤経験がある上に現場をマネジメントできる人材は、製薬会社からも需要が高いですね。
管理薬剤師として働いた経験があれば、今後も需要は伸び続けます。
方法3:地域社会に貢献できる薬剤師を目指す
- 高齢化が進む社会で、地域に貢献できる医療を目指す
- 高齢化社会で老人が増え、地方は在宅医療が中心になる
- 調剤業務は第五世代に移行し、薬剤師の役割は増える
- 薬剤師が少ない地域ほど、需要が高く地域社会に貢献できる
- 薬剤師が少ない地方ほど、薬剤師の給料は高い
- 奈良県の平均年収は777万円、静岡県は684万円もある
これからの医療業界はより高度化し、都市よりも地域社会が中心になります。
私たちは処方通りに薬剤を調合するだけでなく、医療が行き届かない地域でいかに自分が貢献できるか考える必要があります。これからは、高齢化社会で老人が増え在宅医療が中心になっていきますね。
自ら患者のために動ける薬剤師ではなければ、生き残るのは難しいですね。
日本薬剤師会が公表する「薬剤師の将来ビジョン」によると、調剤業務は第四世代から第五世代に移行しています。医療の高度化が進み、私たち薬剤師の役割はますます増えていますね。
幸いにも現状は、地方に行くほど薬剤師の数は少ないです。今は働く場所を変えるだけで、私たち薬剤師の年収が増える恵まれた時代でもあります。国家資格を活かして、どうしたら地域社会に貢献できるのかを考えましょう。
参考:地方に行くと年収は800万円?|地方ほど高給になる理由は?
まとめ:米国薬剤師は年収1375万円もある?
- 医療費が膨らみ、社会保障制度を維持できない
- 人工知能の普及で、近い将来に調剤業務が淘汰される
- 「かかりつけ薬局・薬剤師」で、対人業務が強化される
- 専門病院など、保険適用外の質が高い治療が増えている
- 薬剤師も専門分野なしには、これから生き残れない
日本と米国の薬剤師の最大の違いは、調剤業務が分離されている事ですね。米国では付加価値が低い調剤業務は、薬剤師の業務から完全に切り離されています。その証拠に、米国では調剤を専門に行う「調剤技師」という職種があります。米国薬剤師の年収が1375万円なのに対し、調剤技師の年収は351万円だけです。
日本では調剤も全て薬剤師が行うため、年収が542万円に低く抑えられています。
また、米国薬剤師は日本と違い処方する権利を持ちます。そのため、独自に患者のために処方を作る事ができるし、医師が出した処方に対しても厳しくチェックします。日本では医師が権限を必要以上に持ち過ぎるため、他の職種が専門を発揮しにくいです。
米国化する医療業界で年収を増やすには、専門領域に特化する必要があります。逆にいうと、これまでの日本の薬剤師業界は、国家資格があれば誰でも稼げる時代でした。ビジネス化された社会では、稼げる薬剤師と稼げない薬剤師で二局化しますね。
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