2020年1月に発表された薬剤師の有効求人倍率は4.76倍です。この数値を理由に、薬剤師は供給過剰ではないと主張する転職サイトやブログは多いですよね。しかしながら、薬剤師は供給過剰ではなく、本当に人材が足りていないのでしょうか?
- 「薬剤師は現時点で、10万人も余っていると聞いた…」
- 「薬剤師は過剰にあると、ずーっと言われ続けている…」
- 「これからの過剰社会を生き残るには、何をすれば良いのか…」
結論から伝えると、東京都や徳島県など一部の地域では過剰です。
しかしながら、他の都道府県では薬剤師の数はまだまだ足りていません。そのため、全体的には薬剤師の数はまだまだ過剰と言える状況ではありません。ただし、過度な需要不足という訳でもありません。
厚生労働省の数値を根拠に、薬剤師はまだまだ足りていないと語る人もいますね。しかしながら、「薬剤師の有効求人倍率が4.76倍」という数値は嘘です。なぜならば、薬剤師の有効求人倍率には、医師や歯科医、獣医師も含まれているからです。
人材不足が深刻な医師の統計を含めると、正しい数値は見えません。薬剤師の需要と供給を見るには、10万人当たりの薬剤師数を見る必要があります。
実は、薬剤師は20年以上も前から過剰だと言われています。
それでも現時点で過剰に陥っていない理由は、薬剤師の6割を女性が占めるからです。また、超高齢化社会で65歳以上の割合は27.7%と増え、医療費は42兆円まで膨れ上がっている事も原因にあります。
つまりは、薬剤師の数は増え続けているが、それでも需要には追いついていません。
ここでは、薬剤師は本当に供給過剰なのか、具体的に数値を根拠に紹介します。また、近い将来に供給過剰に陥ったとしても生き延びる方法を紹介します。現時点で過剰はないが、それでも薬剤師の給料格差は着々と進んでいます。
- 薬剤師は過剰ではないが、過度に不足している訳でもない?
- 2020年現時点で、薬剤師が過剰になっていない理由は?
- 薬剤師の過剰社会でも、年収を増やし続ける方法は?
記事の内容を簡単に知りたい
薬剤師はすでに供給過剰って聞いたけど本当なのか…
薬剤師は過剰になったと、将来を悲観している人は多いですよね。
Aさん)薬剤師は現時点で10万人も過剰に余ってる…
知恵袋で薬剤師が過剰で失業するという話があったのですが、調べてみたら現在も10万人近く過剰になっているそうです。でも今薬剤師は割と高待遇で転職もし易いと書いてあります。なんで10万人も余ってるのに就職は楽なんですか?私の大学は文系で先輩方は何十社も就職試験を受けてやっとこさ、と言った感じです。普通の大学生の方が更に余っているということでしょうか?
参考:Yahoo知恵袋
国家資格がある薬剤師の全てが、現在就業している訳ではないですね。女性の薬剤師が6割を占めるため、結婚や育児で休職や離脱している人も多いです。
また、薬剤師は地域によって供給需要が大きく異なります。薬剤師の数が多い東京では余っているが、その他の都道府県では足りていません。そのため、一部の地域では過剰でも、全体的に数が足りず好条件で転職しやすいですね。
Bさん)薬剤師は過剰だとずっと言われ続けている…
薬剤師はAIに仕事を奪われる!とか、薬剤師は過剰!薬は要らなくても病気は治るから薬剤師は要らない!とかず〜〜〜っ と言われてますけど、それ言ってる間に、他の職業の方はバンバンリストラされてると思うんですけど、、、文系の営業マンはもちろん、メーカーのエンジニアとか、半導体技術者とか大手製薬の研究職とか
さすがに偏差値の低い私立は無いとは思いますけれども、北里とか東理とか、人生100年の令和時代、良くないですか、薬剤師?
参考:Yahoo知恵袋
実は薬剤師の過剰は、1995年頃からずっと言われ続けています。この25年間で薬剤師の数は10万人以上増えているが、それでも供給が足りないと言われています。
薬剤師が過剰に陥らない理由は、超高齢化社会で医療や医薬品の需要が増しているからです。医療費も42兆6千億円と膨らみ続けています。薬剤師の数が増え続けても、需要を満たしていないのが現実です。
Cさん)薬剤師が生き残るにはどうすれば良いのか…
30歳、現在、調剤薬局で管理薬剤師をやっています。将来、薬剤師は過剰になり淘汰されていくというニュースはよく聞きます。生き残るためにはプラスアルファの能力を身につける必要がありますが、生き残るためにはどういう能力が必要かと思いますか?
よく言われるのは経営の知識といわれていますが、私は、今、法律に興味があります。
だから、薬事法、薬剤師法、毒物及び劇物取締法の勉強をして詳しくなりたいなという思いがあり、将来はこの法律を教えるような仕事ができればいいなと思います。しかし、この知識は需要があるでしょうか?正直な話、いつまでも現場にいるだけではいけないと思っており、現場から離れた仕事をしたいと常々思っております。
参考:Yahoo知恵袋
法律に興味があるならば、医療業界に特化した弁護士を目指すべきですね。薬剤師が法律の勉強をしたとしても、薬剤師自体の需要が上がる事はありません。
現時点では薬剤師は過剰ではありません。しかしながら、10年後も薬剤師の需要が高いとは限らないですね。すでに、薬剤師の給料は二局化し格差が進んでいます。薬剤師として需要を高めるには、特定の専門領域を持つ事が大切になりますね。
では、薬剤師は供給過剰と言われているが、本当に過剰状態にあるのでしょうか?
薬剤師は、現時点で本当に「供給過剰」なのか?
薬剤師の数は30万人の大台を超え今も増え続けています。でも、本当に薬剤師は供給過剰の状態にあるのでしょうか?
その1:薬剤師は「30万人」に増え続けてる?
薬剤師の数は、調査を開始した1955年から右肩上がりで増え続けています。
1955年に5.2万人だった薬剤師は、2014年には28.8万人まで増えました。そして、2016年には大台の30万人も超えています(参考:【厚労省調査】薬剤師数、初の30万人突破)。
薬剤師が6倍にも急騰した最大の理由は、医薬分業化が進んだからです。
97年〜03年で医薬分業率(26%→50%)が進み、調剤薬局の数が飛躍的に増えました(参考:進む完全分業化)。今や調剤薬局の数はコンビニよりも多く5.5万店もあります。もちろん、60歳以上の割合が3割の世界最高になり、薬の需要が増した事も要因ですね。
これだけ薬剤師の数が増えたら、薬剤師の有効求人倍率はどうなっているのでしょうか?
その2:薬剤師の有効求人倍率数は「4.37倍」?
薬剤師の有効求人倍率は、全国平均で4.37倍もあります。
2013年12月をピークに下げ続けているが、それでも依然として高いですよね。全職種の平均は1.6倍しかありません。この数値を根拠に、薬剤師の数はまだまだ足りていないと主張する転職サイトやブログは多いですよね。
しかしながら、薬剤師の有効求人倍率は参考にはなりません。
なぜならば、「医師・歯科医師・獣医・薬剤師」を含めた倍率だからです。人材不足が深刻な医師を含めたら、正しい薬剤師の求人倍率は知れません。悪質な転職サイトだと、2014年の厚生労働省のレポートを出して、薬剤師は10倍以上だと主張する人もいます(参考:労働市場分析レポート)。
厚生労働省は、薬剤師単体の求人倍率を計算していません。では、私たちは何を根拠に薬剤師の需要と供給を判断すれば良いのでしょうか?
その3:「10万人当たり」の薬剤師は不足している?
薬剤師の需要と供給を見るには、人口10万人に対する薬剤師数を見れば分かります。
人口10万人当たりの薬剤師数の全国平均は190.1人です。実は、全国平均よりも高い都道府県は11しかありません。薬剤師数の割合が最も高いのは東京都と徳島県で、220〜230人と突出して高い事が分かりますね。
東京都は、薬剤師の数が最も供給過多にあると言われています。事実、都内薬局勤務の薬剤師の給料は、物価に換算すると最安値ですね。
都内薬局で働く薬剤師の年収は、30代でも450〜500万円で頭打ちです。東京都の平均年収は622万円と物価が高い事を考えると、都内勤務は最も割に合わない場所です。対して、薬剤師の数が少ない地方に行けば、年収700万円で掲示する薬局もあります。
例えば、青森県の平均年収は371万円だが、薬剤師の年収は670万円です。
つまりは、薬剤師の数が過剰かどうかは、有効求人倍率からでは分かりません。各都道府県の人口に対する薬剤師の数をみる必要がありますね。人口に対する薬剤師の数をみると、実は多くの都道府県で薬剤師は足りていない事が分かります。
では、これだけ右肩上がりに薬剤師が増え続けているのに、どうして薬剤師は過剰にならないのでしょうか?
【2020年】薬剤師が過剰になっていない理由は?
厚生労働省がこのほど発表した「医療費の動向」によると、2018年度に医療機関に支払われた概算医療費は、前年度より3000億円増えて42兆6000億円となり、2年連続で過去最高を更新した(参考:2018年度の医療費42兆6000億円に)。
- 女性が61.3%を占めるため、薬剤師を離れる人も多い
- 女性は男性の職場に合わせるため、働く場所を選べない
- 超高齢化社会で、医薬品の需要が増している
- 60年前の65歳以上の割合は4.9%、現在は27.7%
- 26年前の医療費22兆円から、現在は42兆円も増えた
- 調剤薬局の数はコンビニより増え、5.5万店もある
- 薬局以外にも、ドラッグストアの店舗が増え続けている
実は20年以上も前から、薬剤師の供給数は増え続け過剰になると言われています。しかしながら、2018年に薬剤師数が30万人を超えた今も、東京など一部の地域を除いて薬剤師不足には陥っていません。
過剰にならない最大の理由は、薬剤師は女性の割合が61.3%と高いからです。ライフスタイル毎に働き方が変わる女性は、男性と違い生涯働き続けるわけではないですね。
結婚や出産を機に退職したり、数年後にまた復職する事が多いです。そのため、薬剤師免許を持っているけれども、薬局や病院に勤務していない女性の割合は高いです。また、東京の薬剤師が過剰でも、旦那や彼氏の職場に合わせて都内で働き続ける人も多いですね。
これは、薬剤師に限らず女性が多い看護師にも共通しています。看護学部の数は2倍以上に増えたけれども、依然として看護師不足に陥っています。
また、高齢化社会で医療や医薬品の需要が増え続けているのも大きな要因です。
1950年の65歳以上の割合は4.9%だったが、現在は27.7%まで増えています。その過程で、医療費は1992年の22兆円から、26年間で42兆6千億円まで膨らんでいます。国家資格を取得する学生が倍に増えても、それ以上に医療の需要は増加しています。
ただし、この状態が10年後も続くと考えるのは危険です。
仮に薬剤師の過剰に陥らなくても、医療費削減を理由に私たちの給料が下がると予想できますね。すでに数年も前から、薬剤師の給与格差は広がりつつあります。平均年収以上稼げる薬剤師と、稼げない薬剤師で二局化が進んでいます。
では、私たち薬剤師が過剰時代でも年収を増やすには、どうしたら良いのでしょうか?
「過剰社会」でも年収を増やし続ける方法は?
薬剤師が増え続ける時代で、年収を増やすにはどうすれば良いのでしょうか?
方法1:特定の専門領域に特化した薬剤師を目指す
- がん薬物療法認定薬剤師など、専門領域に特化する
- 漢方薬・生薬認定薬剤師など、専門領域に特化する
- 製薬の知識を活かして、日系や外資系でMRを目指す
- 製薬会社で、学術やDI業務(医薬品管理)など研究職を目指す
私たち薬剤師の仕事は、本来ならば専門職である必要があります。
しかしながら、調剤薬局やドラッグストアの現場をみると、単調でルーチンワークするだけの薬剤師が多いですね。これからの薬剤業界を生き延びるならば、最低でも1つ以上の専門領域を作る必要があります。
例えば、「がん薬物療法認定薬剤師」など特定分野に特化すべきですね。
特定領域の専門家になると、癌を専門にする病院から高待遇でチーム医療に携われます。専門病院では、最先端の技術が揃い医療チームが欧米化していますね。さらには、癌の医薬品を研究開発する製薬会社や医薬品メーカーからも声が掛かります。
処方通りに調剤するだけでは、今後も需要が下がるのは避けられません。
方法2:調剤だけでなく管理できる薬剤師を目指す
- 現場をマネジメントできる人材は、民間企業で需要が高い
- 調剤薬局でも管理薬剤師になると、年収600〜700万円になる
- ドラッグストアで、店舗責任者になると年収は700万円以上
- 管理薬剤師になると、製薬会社からも需要が高い
薬剤師に必要な基礎知識を習得したら、現場をマネジメントできる管理薬剤師を目指しましょう。管理薬剤師という肩書を貰えれば、現場責任者として責任ある仕事ができます。
調剤薬局やドラッグストアで管理薬剤師になると、その店舗の最高額の給与を得られますね。
都内の薬局であれば年収は600万円、地方の年収が高い地域なら700〜900万円、ドラッグストアでも年収700万円以上を得られます。また、調剤経験がある上に現場をマネジメントできる人材は、製薬会社からも需要が高いですね。
管理薬剤師として働いた経験があれば、今後も需要は伸び続けます。
方法3:地域社会に貢献できる薬剤師を目指す
- 高齢化が進む社会で、地域に貢献できる医療を目指す
- 高齢化社会で老人が増え、地方は在宅医療が中心になる
- 調剤業務は第五世代に移行し、薬剤師の役割は増える
- 薬剤師が少ない地域ほど、需要が高く地域社会に貢献できる
- 薬剤師が少ない地方ほど、薬剤師の給料は高い
- 奈良県の平均年収は777万円、静岡県は684万円もある
これからの医療業界はより高度化し、都市よりも地域社会が中心になります。
私たちは処方通りに薬剤を調合するだけでなく、医療が行き届かない地域でいかに自分が貢献できるか考える必要があります。これからは、高齢化社会で老人が増え在宅医療が中心になっていきますね。
自ら患者のために動ける薬剤師ではなければ、生き残るのは難しいですね。
日本薬剤師会が公表する「薬剤師の将来ビジョン」によると、調剤業務は第四世代から第五世代に移行しています。医療の高度化が進み、私たち薬剤師の役割はますます増えていますね。
幸いにも現状は、地方に行くほど薬剤師の数は少ないです。今は働く場所を変えるだけで、私たち薬剤師の年収が増える恵まれた時代でもあります。国家資格を活かして、どうしたら地域社会に貢献できるのかを考えましょう。
参考:地方に行くと年収は800万円?|地方ほど高給になる理由は?
まとめ:薬剤師の数は本当に過剰なの?
- 女性が61.3%を占めるため、薬剤師を離れる人も多い
- 女性は男性の職場に合わせるため、働く場所を選べない
- 超高齢化社会で、医薬品の需要が増している
- 60年前の65歳以上の割合は4.9%、現在は27.7%
- 26年前の医療費22兆円から、現在は42兆円も増えた
- 調剤薬局の数はコンビニより増え、5.5万店もある
- 薬局以外にも、ドラッグストアの店舗が増え続けている
結論から伝えると、東京都や徳島県など一部の地域では過剰ですね。しかしながら、他の都道府県では薬剤師の数はまだまだ足りていません。そのため、全体的には薬剤師の数はまだまだ過剰と言える状況ではありません。
ただし、過度な需要不足という訳でもありません。
厚生労働省の数値を根拠に、薬剤師はまだまだ足りていないと語る人もいますね。しかしながら、「薬剤師の有効求人倍率が4.76倍」という数値は嘘です。なぜならば、薬剤師の有効求人倍率には、医師や歯科医、獣医師も含まれているからです。
人材不足が深刻な医師の統計を含めると、正しい数値は見えません。薬剤師の需要と供給を見るには、10万人当たりの薬剤師数を見る必要があります。
実は、薬剤師は20年以上も前から過剰だと言われています。
それでも現時点で過剰に陥っていない理由は、薬剤師の6割を女性が占めるからです。また、超高齢化社会で65歳以上の割合は27.7%と増え、医療費は42兆円まで膨れ上がっている事も原因にあります。
つまりは、薬剤師の数は増え続けているが、それでも需要には追いついていません。
ただ薬剤師の給料格差は着々と進んでいます。今後競争が激しくなる薬剤師で生き延びるには、特定の専門領域に特化する事、それから地域社会に密着する事が重要になります。
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